大株主死亡時の手続

大株主が死亡した場合、その相続人はどのような手続を行う必要があるのか、ご説明します。

 会社の重要な事項は株主総会で決定されるため、大株主が死亡した場合には、誰が株主たる地位を承継するのか、早急に決定する必要があります。

・遺産分割協議を行います

 相続人が一人である場合や、全株式を特定人に相続させる旨の遺言がある場合には、当該相続人が全株式を承継し、当該相続人が株主になります。 問題は、遺言がなく、相続人が複数いる場合です。この場合には、株式の遺産分割協議を行わなければなりませんが、遺産分割協議には一定の時間が必要となります。その間、会社の意思決定が全くできないとすれば、会社の経営が危ぶまれます。そこで、遺産分割協議が終了するまでの間、以下の手続を行います。
 なお、株式の遺産分割協議については【株式の遺産分割】をご参照ください。

 

・相続人間で、株式についての権利行使者1名を決定します

 相続人が複数いる場合には、株式の遺産分割協議が終了するまで、相続人間で株式の共有が生じます。
 複数の相続人間で株式の共有が生じた場合、相続人は、当該株式についての権利を行使する者1人(権利行使者)を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができません(会社法106条)。
 この権利行使者の決定は、各相続人の持分の価格に従い、その過半数で決定します(民法252条)。
 一般的には法定相続分の割合で、過半数を判断することになります。

・権利行使者を決定できない場合

 相続人間で権利行使者を決定できない場合(たとえば相続人が法定相続分で各々平等の持分をもち、協議がまとまらない場合など)には、裁判所に遺産分割調停を申し立てることが考えられますが、遺産分割調停は通常、多大な時間を要します。その間、株主総会が開催できず、会社の重大な意思決定ができないとすれば、会社の存続が危ぶまれることになりかねません。
 相続人間で協議がまとまらない場合には、一度、弁護士にご相談ください。

・スムーズな会社経営の継続のために、あらかじめ備えましょう

 以上のように、大株主や取締役が亡くなった場合に、その相続人間で株式の配分が定まっていないと、その後の会社経営に思わぬ火種を残すことがあります。
 ご自身の死後、会社経営について意向がある場合には、あらかじめ、遺言を作成するなどし、誰に株式を保有させるか明確にしておくことが望ましいでしょう。詳しくは【会社の後継者争いを防ぐために】をご参照ください。