後継者争いの防止

会社の後継者争いを防ぐために、事前に準備すべきことはなにか、簡単にご紹介します。

 これまで見てきた通り、大株主や取締役が亡くなった場合に、その相続人間で株式の配分が定まっていないと、その後の会社経営に思わぬ火種を残すことがあります。 また、本当は相続人Aに会社の経営を任せたいのに、法定相続分に従うと相続人Bが株式の過半数を保有してしまう場合には、相続人Bが会社経営を先導することになります。
 また、例えば、500株を発行する会社で、Aが200株、Bが100株、Cが200株を保有し、Aの死亡により相続人XとYが各々100株の持分で株式を相続したものの、XとYの間で協議が整わず、XとYが株主権を行使できない場合には、BとCのみの意向で会社経営が行われることになります。 ご自身の死後、会社経営について意向がある場合には、以下のようにあらかじめ、誰に株式を保有させるか明確にさせておきましょう。

(1)遺言を作成する

 まず、遺言を作成することが考えられます。遺言では法定相続人のほか、血縁関係等のない第三者に株式を遺贈することもできます。 もっとも、相続人には遺留分(相続人に法律上確保された最低限度の相続財産)が保障されているため、遺言で株式を特定人に集約しても、争いになる可能性が残ります。また、相続人間に禍根を残さないために、株式を与えない相続人への配慮も不可欠です。
 株式の相続が問題となる場合には、法的な問題が多々生じるため弁護士にご相談ください。
 遺言について詳しくは【遺言の作成】をご覧ください。

 

(2)定款に株式買取請求権を明記する

 たとえばベンチャー企業等でよく見られるものに、優秀な経営者であるAとBが個人的信頼に基づいてタッグを組んで起業するような場合があります。この場合、仮にAが亡くなったら、経営能力のないAの相続人たちが株主になってしまいます。そのような事態を防ぐために、AかBのどちらかが亡くなったら、他方が相手方の相続人から株式を全て買い取ることができるような制度を用意しておくことが考えられます(会社法174条、相続人等に対する売渡しの請求)。手順の概略は以下の通りです。

・定款に定めを置きます

 相続等により、当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を、あらかじめ定款で定めます。

・株主総会を開催します

 株主が死亡して相続が発生した場合、株主総会を開催し、売渡請求をする株式の数、売渡請求の相手方(相続人)の氏名等を決定します。なお、この株主総会においては、基本的に売渡請求の相手方(相続人)は議決権を行使できません。

・売買価格を決定します

 上記の株主総会決議に基づき、会社は相手方(相続人)に対して株式の売渡を請求します。株式の価格は基本的に会社と相手方(相続人)の協議で決定しますが、売渡請求から20日以内であれば、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます。裁判所は売渡請求時の会社の資産状態等の事情を考慮して売買価格を決定します。
 売買価格について会社と相手方(相続人)の協議が整わず、また裁判所に対する価格決定の申立もなされない場合には、売渡請求はその効力を失います。このように売渡請求については迅速性が要求されるため、弁護士に手続を任せることが一般的です。