会社の経営者や大株主の方は、事後の紛争を予防するため、あらかじめ公正証書遺言を作成しておきましょう。ここでは、公正証書遺言の作成方法をご紹介します。
1 遺言は公正証書遺言とし、弁護士にご相談ください
遺言には主に、遺言者の自筆による自筆遺言と、公証人の公証による公正証書遺言があります。公正証書遺言は公証人(判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者等)の面前で作成する遺言で、手間はかかりますが、公証役場で原本を保存するため、紛失や相続人等による偽造・変造のおそれがなく、もっとも確実な遺言形式です。
また、財産状況や相続人間の関係が複雑であったり、株式の相続が問題となる場合には、遺言の内容が複雑多岐にわたるため、弁護士に相談して遺言をドラフトすることが望まれます。 また、実際の相続手続が遺言通りに行われるよう、遺言のなかで遺言執行者として弁護士を選任しておくことが最適です。そこで、遺言を作成する弁護士を遺言執行者として選任し、担当弁護士に対してしっかりとご自分の遺志を伝え、担当弁護士と話し合いを重ねて遺言を作成することが大切となります。
2 自己および会社の資産状況、経営状況について精査します
ご自身の資産、会社の資産、負債等の資料を集め、資産状況を確認します。
3 誰にどのような財産の配分を行うべきか、会社の経営状況を踏まえ、検討します
今後、会社や資産を誰にどのように分配すべきか、現行の経営状況等を踏まえ、検討します。
推定相続人に対する特別受益や遺留分、生前贈与など、相続法の規定に照らしながら慎重に遺言内容を検討します。
4 遺言のドラフトを作成します
遺言の大筋が決まったら、弁護士に遺言のドラフトを依頼します。ドラフトをもとに弁護士と話し合いを重ね、内容をつめていきます。
5 公証人と連絡をとりあい、必要書類を集めます
公証人と連絡を取り合い、遺言のドラフトの内容を確認してもらいます。弁護士に依頼した場合は、この連絡交渉も弁護士が行います。
また、遺言作成に必要な戸籍謄本や住民票、不動産登記簿等の処理を集めます。
6 公証人の目前で、遺言を作成します
遺言の内容が確定したら、遺言者が遺言を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して遺言を作成します。この遺言作成の場には、公正を期するため、立会人2名が必要です。
未成年者や推定相続人、受遺者およびこれらの配偶者及び直系血族等は立会人にはなれません。弁護士に依頼している場合には、当該弁護士とその事務所の事務員などが立会人となる場合が多いです。
7 遺言を保管します
公正証書遺言では、遺言の原本(署名や押印のあるもの)、正本(原本のコピーのようなもので、遺言内容を実現するときに金融機関等から提示を求められるもの)、謄本(原本の控え)が作成されます。
作成した公証役場には公正証書原本が保管され、遺言者の死後、相続人らの請求により内容が開示されます。
正本および謄本は遺言者が保管しますが、管理が心配な場合や内容を周囲に秘密にしておきたい場合は、遺言執行者となる弁護士に保管を依頼することがあります。
8 財産や経営状況に変化がある場合には、随時、ご相談ください
遺言はいつでも撤回・修正することが可能であり、古い前の遺言と新しい後の遺言の内容が抵触するときは、新しい後の遺言が優先します(民法1022条、1023条)。したがって、会社の経営状況を見つつ、その都度、遺言の内容を柔軟に変更することが可能です。事情の変更が生じた場合には、随時、ご相談ください。