まず、一般的な相続手続の流れについて簡単にご説明します。
1 被相続人の死亡により、相続が開始します
2 相続人と相続財産を確認します
(1)相続人は誰か
被相続人の親族は、以下の順序で相続人となります。
①被相続人の配偶者(夫、妻等)
②被相続人の子、またはその代襲※者(孫等)、またはその再代襲者(ひ孫等)
➝②が不在の場合、③被相続人の直系尊属(父、母等)
➝③が不在の場合、④被相続人の兄弟姉妹、またはその代襲者(めい、おい等)
※「代襲」とは、相続人となるべき者が相続開始時に死亡等の事由により相続権を失っているとき、その者の直系卑属が、その者と同一順位で相続人となることをいいます。
(2)何を相続するか
相続人は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を承継するため、財産や債権のみならず、負債や債務のほか、法律上の地位も承継します。
相続するもの
・被相続人の預貯金(通帳を確認)、不動産(登記簿を確認)、株式等(株券や株主宛の郵便物、株主 名簿を確認)、貸与金や損害賠償請求権などの債権(契約書等を確認)・借金などの債務(契約書等を確認)、保証債務(契約書等を確認)・占有権、賃貸人の地位、賃借人の地位、株主の地位など
相続しないもの
・代理権、被雇用者の地位、扶養請求権、生活保護受給権、身元保証債務等など、性質上、被相続人に 一身専属性が認められるもの・取締役の地位など、委任契約に基づく地位・生命保険の受取金
なお、相続債務の弁済は相続によって得たプラスの財産の限度においてのみ責任を負うとする限定承認や、全ての債権債務の相続を放棄する相続放棄は、相続の開始を知ったときから3か月以内に、家庭裁判所において申述する必要があります。
3 遺言の有無を確認します
被相続人の遺言がある場合は、基本的に、遺言に記載の通り、相続人に財産を分配します。遺言内容に不明瞭な点があったり、そもそも遺言が無効である等の事情がある場合には、弁護士が仲裁に入ったり、場合によっては訴訟に発展することもあります。
4 遺産分割協議をします
被相続人の遺言がない等の場合には、相続人全員で、どのように財産を分配するか、遺産分割協議を行います。協議が調わない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます(調停分割)。調停分割が不調に終わった場合には、審判に移行します(審判分割)。
調停や審判に至った場合は、基本的に、民法の定める公平な法定相続分と相続方法(特別受益の控除や寄与分の付加)に従って財産を分割します。
民法の定める法定相続分
①配偶者と②子 1/2:1/2(人数分に分ける)
①配偶者と③直系尊属 2/3:1/3(人数分に分ける)
①配偶者と④兄弟姉妹 3/4:1/4(人数分に分ける)
5 相続財産を分配します
遺言や遺産分割協議書の記載通りに、遺産を分配します。遺言や遺産分割協議書に反して不当な遺産の分配がなされた場合は、訴訟を提起するなどして返還を求めます。